

うちの子、学校心臓検診で「WPW症候群」だって言われたんです。
初めて聞く名前でなんだか怖いのですが、これって何ですか?運動はしても大丈夫ですか?治療は必要ですか?

お子さんが聞きなれない病気だといわれると、とても心配になりますよね。
WPW症候群は、心臓の中に「余計な電気の通り道」ができてしまっている状態です。
普段は全く症状がなく元気に生活しているお子さんも多いですが、突然胸がドキドキする発作が生じたり、まれに心臓の動きへの影響が問題になったりすることがあります。
ここでは学校心臓検診でWPW症候群を指摘されたお子さんについて、保護者の方向けに、心電図、症状、運動制限、治療、通院の考え方を説明しますね。
あわせて、正常な心臓(心臓の中の電気の流れ)を読むと、より理解しやすくなります。
【ざっくりと!】
- WPW症候群は、心房と心室の間に、通常とは別の余計な電気の通り道がある状態です。この通り道を副伝導路(ふくでんどうろ)、またはKent束(ケントそく)と呼びます。
- 心電図では特有の波形(PR時間の短縮、デルタ波など)が見られ、学校の心臓検診で見つかることがよくあります。
- 多くのお子さんは普段は無症状で、元気に生活しています。
- 注意が必要なのは、突然脈が速くなる発作(房室回帰頻拍)や、心臓の収縮リズムのズレ(心室内同期不全)が起きた時です。
- 症状や心機能に問題がなければ、通常は強い運動制限は不要です。
- 症状や検査結果に応じて、お薬やカテーテルによる治療を検討します。
【WPW症候群とは?副伝導路とは?】
WPW症候群は、Wolff先生、Parkinson先生、White先生という3人の医師の名前の頭文字から名づけられたものです。
正常な心臓では、心房と心室の間は決められた場所以外では電気が行き来できないようになっています。電気は、房室結節(ぼうしつけっせつ)という特別な通り道を通って心房から心室へ伝わります。
ところがWPW症候群では、心房と心室の間に、通常とは別の余計な電気の通り道があります。この通り道を副伝導路、またはKent束と呼びます。
副伝導路があると、電気が通常より早く心室に伝わったり、条件がそろうと電気が心臓の中をぐるぐる回る回路を作ったりすることがあります。
学校心臓検診の結果用紙では「WPW症候群」と書かれることがありますが、症状がなく心電図の波形だけで見つかった場合は、厳密には「WPW型心電図」「WPWパターン」とも呼ばれます。このページでは分かりやすく「WPW症候群」として統一して説明します。
WPW症候群があるだけで、すぐに危険というわけではありません。大切なのは、発作の有無や心臓の動きを調べ、将来的に治療が必要かを確認していくことです。
【WPW症候群のA型・B型・C型とは?】
WPW症候群では、副伝導路がどのあたりにあるかによって、心電図の見え方が変わります。心電図の波形によって、A型、B型、C型という分類が使われることがあります。
| 分類 | 特徴(副伝導路の推定位置) |
|---|---|
| A型 | 副伝導路が左側にある場合に見られやすい心電図パターン |
| B型 | 副伝導路が右側にある場合に見られやすい心電図パターン |
| C型 | 中隔付近に副伝導路がある場合に見られやすい心電図パターン |
ただし、これらはあくまで心電図から副伝導路の場所を推定するための目安です。「A型だから安心」「B型だから危険」というような重症度の分類ではありません。危険度については、症状の有無や心エコーなどの結果を総合して判断します。

↑ WPW症候群(A型)のイメージです。

↑ WPW症候群(B型)のイメージです。
【WPW症候群の心電図:デルタ波とは?】
WPW症候群の心電図では、デルタ波と呼ばれる特徴的な波形が見られます。
副伝導路を通った電気が通常より早いタイミングで心室に届くため、心電図の波(QRS波)の立ち上がりがなだらかになります。このなだらかな部分をデルタ波と呼びます。
医療者は心電図の細かい波形から、「副伝導路がありそうか」「どのあたりにありそうか」「追加検査が必要か」を判断しています。(保護者の方が波形の詳細を覚える必要はありませんのでご安心ください)

【間欠性WPW症候群・顕性WPW症候群・潜在性WPW症候群】
副伝導路は、いつも電気を通しているとは限りません。電気の通り方によって、以下のように表現されます。
| 分類 | 心電図の見え方と特徴 |
|---|---|
| 顕性WPW症候群 | 普段の心電図でデルタ波などのWPW所見が常に見える状態 |
| 間欠性WPW症候群 | WPWの心電図所見が出たり消えたりする状態 |
| 潜在性WPW症候群 | 普段の心電図ではWPW所見が見えないものの、副伝導路が頻拍発作に関係する状態 |
「間欠性」と聞くと軽症に感じるかもしれませんが、間欠性でも動悸発作を起こすことがあります。最終的な判断は、運動負荷心電図や心エコーなどと合わせて行います。
【WPW症候群で起こる症状】
普段は何も症状がなく元気に生活していることが多いですが、以下のような症状や問題が起こることがあります。
1. 突然始まり、突然止まる動悸(房室回帰頻拍)
最もよく問題になるのが、急に脈が速くなる房室回帰頻拍(ぼうしつかいきひんぱく)です。
通常、心臓の電気は一方通行ですが、WPW症候群では副伝導路があるため、条件がそろうと電気が心臓の中をぐるぐる回る「回路」を作ってしまいます。これが完成すると、突然脈が速くなる頻拍発作が起こります。



【主な症状】
- 胸が急にドキドキする、痛む
- のどの奥がモヤモヤする、気持ち悪い
- 顔色が悪くなる、手足が冷たくなる
- だるくて体に力が入らない
- (乳幼児の場合)おっぱい・ミルクを飲まない、嘔吐、ぐったりする
発作は突然始まり突然止まることが多いため、「何時何分から何時何分まで続いた」と時間がはっきり分かることがあります。小さいお子さんの場合は自分で症状を言えないため、顔色の悪さや機嫌の悪さで気づかれることがあります。
2. 心臓の収縮リズムのズレ(心室内同期不全)
本来、心室の筋肉は全体がぴったり揃って収縮します。しかし副伝導路を通った電気が早く届いてしまうと、心室の一部だけが早く反応し、収縮のタイミングがずれることがあります。これを心室内同期不全と呼びます。
このズレが強いと心臓が血液を押し出す力が落ちることがあるため、心エコーで動きを確認します。
3. 心房細動を合併した場合
主に大人になってから問題になる不整脈ですが、心房細動を合併すると非常に速い頻拍(偽性心室頻拍)になることがあります。小児期に重篤な事態になることはまれですが、定期的な評価が大切です。
【学校心臓検診でWPW症候群と言われたら】
まずは落ち着いて、医療機関で詳しい検査を受けましょう。学校心臓検診は、症状がないお子さんの中から「念のため確認が必要な所見」を見つけるためのものです。
受診時には、本当にWPW症候群か、過去に動悸発作や失神はないか、心臓の動きに問題はないかなどを調べます。これまで元気に過ごしており、検査でも異常がなければ、過度に心配しすぎる必要はありません。
【どんな検査をするの?】
- 12誘導心電図:波形(デルタ波やパターンの分類)を詳しく確認します。
- 心エコー:心臓の形や動き、収縮のズレ(心室内同期不全)の有無、他の心疾患がないかを確認します。
- 運動負荷心電図:運動によって発作が出ないか、波形がどう変化するかを確認します。
- ホルター心電図・携帯型心電図:日常生活の中で不整脈が出ていないかを記録します。
【どんな治療をしますか?】
症状、発作の有無、心臓への影響、年齢や体格などを総合して判断します。
薬物治療
動悸の発作(房室回帰頻拍)を起こしたことがある場合、予防としてお薬(β遮断薬など)を飲むことがあります。発作や心機能に問題がない場合は、原則としてお薬は使わず経過観察となります。
カテーテルアブレーション
不整脈の原因となっている副伝導路を、細い管(カテーテル)を使って焼灼・冷凍し、根本的に治療する方法です。以下のような場合に検討されます。
- 発作を何度もくり返す、症状が強い
- お薬で十分に抑えられない、副作用で続けられない
- 心臓の動きに影響が出ている(心室内同期不全など)
体が小さいうちは治療できる施設やリスクに制限がありますが、体が大きくなると安全に行いやすくなります。治療のタイミングは主治医とよく相談して決めていきます。
【運動制限は必要ですか?通院間隔はどれくらいですか?】
保護者の方が最も心配される「運動」についてですが、結論から言うと、頻拍発作がなく、心臓の形や動きに異常がなければ、通常は強い運動制限を必要としないことが多いです。
学校心臓検診のガイドラインでも、上記のような問題がない場合は「E可(制限なし)」となり、観察間隔も1〜3年で良いとされています。
ただし、以下のような場合は運動制限や追加検査が必要になります。
- 過去に頻拍発作を起こしたことがある
- 運動中に強い動悸、胸痛、失神がある
- 検査(心エコーや運動負荷心電図)で異常が見つかった
通院間隔は、症状がなく安定していても1〜3年ごとに確認することが多いです。当院では、将来的にカテーテル治療の選択肢が出てくることなども見据え、無症状であっても定期的にご相談できる関係性を保つことが大切だと考えています。
【受診の目安と、発作が起こった時の対応】
以下のような症状がある場合は、早めに受診してご相談ください。
- 突然始まり、突然止まる動悸
- 運動中の強い動悸、胸の痛み
- 顔色不良、息苦しさ
- (乳幼児の場合)おっぱいやミルクを飲まない、嘔吐、ぐったりしている
頻拍発作が起こってしまったら?
周囲の大人が慌てすぎず、お子さんの状態を確認することが大切です。
「発作が始まった時刻」と「止まった時刻」をメモし、可能であればスマートウォッチ等で脈拍や心電図を記録してください。
【ためらわずに救急受診が必要なサイン】
意識がぼんやりしている、失神した、顔色が悪い、胸痛や息苦しさが強い、ぐったりしている、発作が長く続く場合は、すぐに救急を受診してください。
※主治医から発作時の対応について指示が出ている場合は、それに従ってください。
【よくある質問】
WPW症候群は病気ですか?
はい、心臓の電気の通り道に関する病気の一種です。普段は無症状のお子さんも多いですが、突然の動悸発作などが起こる可能性があるため、定期的な確認が必要です。
WPW症候群は自然に治りますか?
自然に治る(副伝導路が消える)ことは稀です。成長とともに心電図の見え方が変わることはありますが、症状がなくても定期的に経過を見ながら、治療の必要性を判断していきます。
間欠性WPW症候群とは何ですか?
WPW症候群の心電図の波形が出たり消えたりする状態です。常に波形が出るタイプより危険性が低いと考えられることもありますが、動悸発作を起こすことはあるため油断せず検査結果と合わせて判断します。
WPW症候群のA型・B型は危険度の違いですか?
いいえ、危険度の違いではありません。副伝導路の場所を推定するための分類です。危険度は症状や検査結果から総合的に評価します。
WPW症候群で疲れやすいことはありますか?
全員ではありませんが、状態によっては疲れやすさが出ることがあります。頻拍発作をくり返している場合や、心臓の動きに影響が出ている場合は、疲れや息切れを感じることがあります。
WPW症候群で運動制限は必要ですか?
症状や心機能に問題がなければ、通常は強い制限は不要です。ただし、運動中の動悸や失神がある場合などは制限が必要になります。詳しくは上記の「運動制限は必要ですか?」の項目をご覧ください。
カテーテルアブレーションで治療できますか?
はい、条件が合えば治療可能です。副伝導路の場所や年齢、体格などの条件をもとに、治療に踏み切るか相談していきます。
頻拍発作がない場合でも通院は必要ですか?
はい、定期的な確認をおすすめします。長期的に安定していれば通院間隔は空きますが、成長とともに治療の選択肢が変わることもあるため、主治医と相談してペースを決めていきましょう。

動悸がなくて、心臓の動きに問題がなければ、すぐに治療や強い運動制限が必要になるわけではないんですね。

その通りです。WPW症候群は、普段元気に生活しているお子さんも多い病気です。
一方で、頻拍発作が起きた時の対応、心臓の動きへの影響、将来的にカテーテルアブレーションを検討するかどうかなど、定期的に確認しておきたい点もあります。
お困りのことがあったら、いつでもご相談くださいね。
この記事を書いた人:
天童ハート小児科 院長 高橋辰徳
小児科医/小児循環器診療
この記事は、保護者の方向けに、学校心臓検診や小児循環器外来でよくあるご相談をもとに作成しています。
最終更新日:2026年7月5日
参考:






