

先生!うちの子、健診で「心雑音」を指摘されたんです。
心臓に雑音があるって言われると、とても心配です。これは怖い病気なんでしょうか?心エコーを受けた方がよいですか?

心雑音(しんざつおん)とは、聴診器で心臓の音を聞いた時に、通常の心音(しんおん、心臓の音)とは別に聞こえる音のことです。
子どもの心雑音は、病気ではない「無害性心雑音」であることも多いです。
一方で、生まれつきの心臓病が隠れていることもあります。
ここでは、健診や外来で「心雑音」と言われたお子さんについて、保護者の方向けに、心雑音の意味、よくある無害性心雑音、心エコーが必要になる場合、受診の目安を説明します。
【ざっくりと!】
- 心雑音とは、聴診器で心臓の音を聞いた時に、正常な心音とは別に聞こえる音のことです。
- 子どもの心雑音は、病気ではない「無害性心雑音(機能性心雑音)」であることも非常に多いです。
- 一方で、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、弁膜症などが隠れていることもあります。
- 心雑音だけで、病気かどうかを完全に判断することはできません。症状、年齢、雑音の聞こえ方、心音、心エコー所見を合わせて判断します。
- 特に新生児や乳児の心雑音、チアノーゼ、哺乳不良、体重増加不良、息切れ、失神などを伴う場合は、早めの評価が必要です。
- 心エコー検査は、心臓の形、弁の動き、血液の流れを確認できる検査で、心雑音の原因を調べるのに役立ちます。
【心雑音とは?】
心臓には、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋があります。
また、血液が逆流しないようにするために、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁という4つの弁があります(弁とは、お部屋についている片開きのドアと考えてください)。
弁が閉じる時に聞こえる「ドクン、ドクン」という音が、正常な心音です。正常な心音以外に、血液の流れによって「ザー」「シュー」「ブーン」といった音が聞こえることがあります。これを心雑音と言います。
心雑音は、血液の流れが速くなったり、血液が狭い場所を通ったり、通常とは違う通り道を流れたりすることで聞こえることがあります。
詳しく心臓の形を知りたい方は、こちらもご覧ください。
→ 正常な心臓(形と血液の流れ)
【子どもの心雑音はよくある?】
子どもの心雑音は、外来や健診でよく見つかります。
特に、熱がある時、運動後、泣いた後、緊張している時、貧血がある時、甲状腺機能亢進症がある時などは、心臓から送り出される血液の流れが速くなり、普段より雑音が聞こえやすくなることがあります。
子どもは胸の壁が薄く、心臓の音が大人よりも聞こえやすいため、病気ではない雑音が聞こえることもよくあります。一方で、心雑音は生まれつきの心臓病を見つけるきっかけになることもあります。
そのため、「心雑音がある=怖い病気」とすぐに考える必要はありませんが、「必ず無害」と決めつけることもできません。
【無害性心雑音とは?】
心雑音の中には、心臓の形や血液の流れに大きな問題がなく、治療を必要としないものがあります。これを無害性心雑音、または機能性雑音、生理的雑音と呼びます。心エコー検査をしても、治療が必要な心臓病は見つかりません。
無害性心雑音には、通常「症状がない」「元気に運動できる」「成長に問題がない」「心エコーで異常がない」といった特徴があります。代表的なものは以下の3つです。
| 無害性心雑音の種類 | 特徴・聞こえやすい時期など |
|---|---|
| Still(スティル)雑音 | 子どもでよく聞かれる代表的な雑音。発熱時、運動後、緊張している時などに目立ちやすい。 |
| 末梢性肺動脈狭窄 | 新生児期〜乳児期早期によく聞かれる。肺動脈の枝がまだ細いことで聞こえ、成長とともに自然に消えることが多い。 |
| 静脈コマ音 | 首から胸に戻る太い静脈の血流音。「ブーン」というコマが回るような音が特徴。首の向きで聞こえ方が変わる。 |
Still雑音
Still雑音は、子どもでよく聞かれる無害性心雑音の一つです。心臓から血液が勢いよく流れ出る時に、胸の左側を中心に、柔らかい雑音として聞こえることがあります。
熱がある時、運動後、緊張している時、貧血がある時などに目立つことがあります。日によって聞こえたり聞こえなかったりすることもあります。心エコーで心臓の形や動きに問題がなければ、通常は治療や運動制限は必要ありません。
末梢性肺動脈狭窄
末梢性肺動脈狭窄は、新生児期から乳児期早期によく聞かれる心雑音です。赤ちゃんの肺動脈の枝がまだ細いため、そこを血液が通る時に雑音として聞こえることがあります。
多くは成長とともに肺動脈が太くなり、雑音は自然に聞こえにくくなります。
詳しくはこちらもご覧ください。
→ 末梢性肺動脈狭窄
静脈コマ音
静脈コマ音は、首から胸に戻ってくる太い静脈の血流によって聞こえる雑音です。「ブーン、ブーン」というコマが回るような音として聞こえることがあります。
首の向きや体勢によって聞こえ方が変わることがあります。心臓そのものの病気ではなく、無害性心雑音として扱われることが多いです。
【病気が原因となる心雑音】
心雑音の中には、生まれつきの心臓病や弁の異常などが原因となるものがあります。代表的な病気は以下の通りです。
| 原因となる主な病気 | 病態・特徴 |
|---|---|
| 心室中隔欠損症 (VSD) | 右心室と左心室の間の壁に生まれつき穴が開いている病気。穴を通る血流が雑音になる。 |
| 心房中隔欠損症 (ASD) | 右心房と左心房の間の壁に穴が開いている病気。肺へ流れる血液が増えることで雑音が聞こえる。 |
| 動脈管開存症 (PDA) | 胎児期に必要だった血管(動脈管)が生後も閉じずに残っている状態。特徴的な雑音が聞こえる。 |
| 弁膜症 | 大動脈弁狭窄、肺動脈弁狭窄など。心臓の弁が狭い、またはしっかり閉じず逆流することで雑音が聞こえる。 |
心室中隔欠損症(VSD)
右心室と左心室の間の壁に、生まれつき穴が開いている病気です。左心室から右心室へ血液が流れる時に、穴を通る血液の流れが速くなり、心雑音として聞こえることがあります。
穴が小さい場合は症状がなく、心雑音をきっかけに見つかることがあります。穴が大きい場合は、哺乳不良、体重増加不良、呼吸が速い、汗をかきやすいなどの症状が出ることがあります。
→ 子どもの心室中隔欠損症
心房中隔欠損症(ASD)
右心房と左心房の間の壁に、生まれつき穴が開いている病気です。肺へ流れる血液が増えることで、肺動脈弁のあたりに心雑音が聞こえることがあります。
子どものうちは症状が目立たず、心雑音や学校心臓検診の心電図異常、右脚ブロックなどをきっかけに見つかることがあります。
→ 子どもの心房中隔欠損症(ASD)
動脈管開存症(PDA)
生まれる前に必要だった血管である動脈管が、生後も閉じずに残っている状態です。大動脈から肺動脈へ血液が流れ込むことで、特徴的な心雑音が聞こえることがあります。動脈管の太さや肺・心臓への負担によって、経過観察、カテーテル治療、手術などを検討します。
→ 子どもの動脈管開存症(PDA)
弁膜症
心臓の弁が狭い場合や、しっかり閉じずに逆流がある場合にも、心雑音が聞こえることがあります。例えば、大動脈弁狭窄、肺動脈弁狭窄、僧帽弁逆流、三尖弁逆流などがあります。心雑音の聞こえる場所、音のタイミング、心エコー所見をもとに診断します。
【新生児の心雑音で注意すること】
新生児期の心雑音は、年長児の心雑音よりも慎重に評価します。
新生児では、心臓の病気があっても、最初は症状が目立たないことがあります。出生直後は胎児循環から新生児循環へ変化する時期であり、時間とともに心雑音の聞こえ方や症状が変わることもあります。
もちろん、新生児の心雑音がすべて危険というわけではありません。末梢性肺動脈狭窄のように、成長とともに目立たなくなる雑音もあります。ただし、以下のような場合は早めの評価が必要です。
- 哺乳が弱い、または哺乳中に息が荒い
- 体重が増えにくい
- 唇や顔色が悪い(チアノーゼ)
- 呼吸が速い、汗をかきやすい
- 酸素飽和度が低いと言われた
- 産院や健診で心雑音の精査を勧められた
新生児や乳児の心雑音では、心エコーで心臓の形や血液の流れを確認することが重要です。
【心エコーが必要になる場合】
心雑音を聞いただけで、病気の有無を完全に判断することはできません。心エコー検査では、心臓の形、弁の動き、血液の流れ、心臓への負担を確認できます。痛みはなく、放射線被ばくもありません。
以下のような場合は、心エコー検査を検討します。
- 新生児や乳児の心雑音
- 強い心雑音
- 音が硬い、荒い、長く続く心雑音
- 拡張期雑音が疑われる場合
- チアノーゼがある
- 哺乳不良、体重増加不良、息切れがある
- 胸痛、動悸、失神がある
- 運動時の息切れや疲れやすさが目立つ
- 心音の異常、クリック音、II音の異常などを伴う
- 学校や園の健診で精密検査を勧められた
- 家族に先天性心疾患、心筋症、若年突然死などがある
一方で、明らかに無害性心雑音と考えられ、症状や診察所見に問題がない場合には、経過観察となることもあります。判断に迷う場合は、心エコーで確認すると安心につながることがあります。
【受診の目安】
心雑音を指摘された場合、以下のような時は早めに受診してください。
- 新生児や乳児で心雑音を指摘された
- 心エコー検査を勧められた
- 哺乳不良がある、体重が増えにくい
- 息が荒い、顔色や唇の色が悪い
- 運動時に息切れしやすい、疲れやすい
- 胸の痛み、動悸、失神がある
- 家族に心臓病や突然死を指摘された方がいる
症状がなく元気に過ごしている場合でも、健診で「要精密検査」と書かれている場合は、結果用紙を持って受診してください。
【よくある質問】
心雑音は病気ですか?
病気そのものの名前ではなく、血液の流れによって聞こえる「音」の所見のことです。無害性心雑音のように治療を必要としないものもありますが、心室中隔欠損症などの病気が隠れていることもあります。
子どもの心雑音はよくありますか?
はい、非常によく見つかります。特に年長児では、無害性心雑音であることも多いです。ただし、新生児や乳児の心雑音、症状を伴う心雑音、強い心雑音では慎重に評価します。
無害性心雑音なら運動制限は必要ですか?
通常、運動制限は全く必要ありません。心エコーで心臓の形や動きに異常がなく、無害性心雑音と判断される場合は元気に運動して大丈夫です。
心雑音で心エコーは必ず必要ですか?
全員に必ず必要なわけではありませんが、原因を特定するために行うことが多いです。聴診だけで病気の有無を完全に判断することはできないため、症状がある場合や健診で精密検査を勧められた場合には心エコーで確認します。
新生児の心雑音は危険ですか?
すべてが危険なわけではありませんが、年長児よりも慎重な評価が必要です。哺乳不良、呼吸が速い、体重が増えにくいなどがある場合は早めに相談してください。
心雑音は自然に消えることがありますか?
はい、無害性心雑音などは成長とともに自然に聞こえなくなることがよくあります。一方で、病気が原因の心雑音では、原因となる病気の経過によって変化します。
心雑音があると、心臓に穴があるということですか?
必ずしもそうではありません。心臓に穴が開いている病気(VSDやASDなど)以外にも、無害性心雑音や弁の異常など、さまざまな原因があります。実際の状態は心エコーで確認します。
心雑音と卵円孔開存は関係ありますか?
卵円孔開存だけでは、明らかな心雑音の原因にならないことが多いです。ただし、心エコーで心雑音を調べた時に、卵円孔開存が偶然見つかることがあります。心房中隔欠損症との違いを確認することが大切です。
→ 卵円孔開存
【当院での検査について】

心雑音には、心配ないものもあれば、心臓の病気が隠れているものもあるんですね。心エコーで確認できると安心ですね。

その通りです。心雑音という言葉だけで過度に怖がる必要はありませんが、背景に病気が隠れていないかを確認することが大切です。
当院では、生まれたばかりの新生児から成人まで、全年齢の心エコー検査が可能です。
心雑音を指摘された方、園や学校の健診で精密検査を勧められた方、心臓病が心配な方はご相談ください。
この記事を書いた人:
天童ハート小児科 院長 高橋辰徳
小児科医/小児循環器診療
この記事は、保護者の方向けに、乳幼児健診、学校健診、小児循環器外来でよくあるご相談をもとに作成しています。
最終更新日:2026年7月5日
参考:
Heart Murmurs in Children: Evaluation and Management
先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
2025年JCS/JSPCCSガイドラインフォーカスアップデート版 学校心臓検診






