
先生!うちの子、健診で「心雑音」を指摘されたんです。これって何ですか?怖い病気ですか?
聴診器で心臓の音を聞いた時に聞こえる雑音を、「心雑音」と言います。
子供の心雑音は心配ないものが多いのですが、時に治療が必要な病気が隠れていることがあるので、心エコー検査などの検査が必要になります。
詳しく見ていきましょう。
【ざっくりと!】
・心臓の中には4つの扉(弁と言います)があり、その扉が閉じる際に「ドクン」という音がなります。これを正常な心音と言います
・正常な心音以外の、本来は聞えないはずの音を心雑音と言います。聴診器を当てることで判断します。
・害のない「無害性雑音」である場合と、何らかの病気が隠れている場合があります。
・原因検索には、心エコーによる検査が役に立ちます。
【心音の由来】
・心臓には4つの部屋(心房と心室)、4つの扉(弁)があります。「正常な心臓(形と血液の流れ)」
・4つの弁は、血液が下流に流れて欲しいタイミングで開き、逆流してほしくないタイミングで閉じます。弁が勢いよく閉じる時に音がなりますが、これを正常な心音と言います。
(心臓の音はよく「ドクン、ドクン」と表現されますが、「ド」は僧帽弁と三尖弁が閉じる音で、I音と言われます。「クン」は大動脈弁と肺動脈弁が閉じる音で、II音と言われます。子供の場合には「トッカットッカッ」という音が聞えますが、「トッ」がI音、「カッ」がII音です)
・この正常な心音以外に聞こえる音を心雑音と言います。(その名の通り心臓が原因であることもあれば、心臓近くの太い血管が原因のこともあります)
【心雑音の種類】
<無害性雑音>
雑音は聞こえるものの血液の流れには問題がなく、治療が必要ないものです。お子さんの場合は特にこの無害性雑音は聴取しやすく、全体の10-30%(注意深く聞くと約半数)のお子さんで聞かれると言われています。
・末梢性肺動脈狭窄
新生児期~生後1か月頃までの間によく聞かれるものです。左の肺に血液を送る左肺動脈が狭く、そこを通過する血液が高速になり、乱流になることで聞かれる雑音です。I音とII音の間の柔らかい雑音です。
・Still雑音
子供の元気な心臓から血液がたくさん駆出されることで、心臓の出口で雑音が聞えるものです。末梢性肺動脈狭窄と類似した、I音とII音の間の柔らかい雑音が聞かれます。少しやせ気味のお子さんの左胸でよく聴取します。運動後、発熱時、貧血時、甲状腺機能亢進症などで強く聴取することがあります。日によって聞こえたり聞えなかったりすることも稀ではありません。
・静脈コマ音
胸の右上のあたりで聴取する、ブーンブーンというコマの回るような雑音です。太い静脈の中の血液の乱流によって聴取します。
<病気が原因となる雑音>
・心室中隔欠損症:心室中隔という壁に穴が開いており、そこを高速の血流が通過することで聴取します
・心房中隔欠損症:肺動脈弁を通過する血流量が多いため、肺動脈弁がある胸の真ん中やや左で雑音が生じます
・動脈管開存症:大動脈と肺動脈の間の血管が雑音の原因となります
・弁膜症:心臓の扉にあたる弁が狭いと、血液が通過する時に雑音を聴取します。また本来閉じているべきタイミングでしっかり閉鎖していないと、逆流が生じ雑音の原因となります
・その他の病気:その他多数の心臓血管疾患で様々な雑音を聴取します。
<雑音以外の異常>
雑音以外にも、過剰心音、II音の分裂、クリック音、心膜摩擦音などの異常所見がないか、聴診の度に確認しています。
【雑音を聴取したらどうする?】
心雑音は、日常の診療の場面や、園や学校の健診などで見つかります。
明らかに無害性雑音であることが分かる場合は、何もしません。非常に頻度の高いものであり、敢えて親御さんに伝えないこともよくあります。
一方で、無害性なのか疾患があるのかよく分からない場合や、明らかに異常な雑音の場合は検査が必要です。
雑音の原因特定には心エコーが最も有用な検査となります。エコー検査は痛みがなくお子さんへの負担が小さいというメリットがあります。
クリニックや病院を受診してエコーをしてもらうといいのですね。
当院では生まれたばかりの新生児から成人まで、全年齢の心エコーが可能です。実際、心雑音を指摘された出生直後~高校までの幅広い年齢の方が来院されています。心雑音が心配な方は是非ご来院下さいね。