

先生!うちの子、学校心臓検診で「上室期外収縮」と言われたんです。
不整脈って書いてあって心配です。脈が飛ぶ感じがある時もあるみたいですが、これは危ない病気なんでしょうか?運動はしても大丈夫ですか?

心臓の検査で異常を指摘されると心配になりますよね。
上室期外収縮とは、心臓の中に「あわてんぼうさん」がいて、時々、本来よりも早いタイミングで「もう動いちゃおうよ!」という余計な合図を心臓全体に送ってしまう状態です。
心臓の拍動のタイミングがバラバラになる不整脈の一種ですが、子どもでは心電図検査で見つかることも多く、回数が少なく他に問題がなければ過度な心配はいりません。普通に運動できることも多いですよ。
一方で、回数が多い、連発する、運動で増える、強い動悸がある場合や、「上室頻拍」など別の不整脈のきっかけになる場合には、詳しい検査や経過観察が必要になることがあります。
ここでは、学校心臓検診で「上室期外収縮」を指摘されたお子さんについて、心電図の仕組みや症状、検査、治療、運動制限の考え方を保護者の方へ分かりやすく説明しますね。
あわせて、正常な心臓(心臓の中の電気の流れ)を読むと、より理解しやすくなります。
【まずはざっくり解説!】
- 上室期外収縮は、心房や房室結節など、心室より上の部分から予定より早く電気の合図が出る不整脈です(あわてんぼうさんの不整脈)。
- 「脈が飛ぶ」「胸がドキッとする」「のどの奥がモヤッとする」と感じることがありますが、全く無症状のことも多いです。
- 出現回数が少なく、症状がなく、心臓の形や働きに異常がなければ、治療や運動制限は不要なことがほとんどです。
- 頻繁に出る、連発する、形が複数ある(多形性)、運動で増える、または強い症状がある場合は、詳しい検査や経過観察を行います。
- この「あわてんぼうさんの合図」が3回以上連続する場合は、「上室頻拍」という別の基準で評価します。
【上室期外収縮ってどんな状態?】
上室期外収縮は不整脈の一種で、「上室性期外収縮」と呼ばれることもあります。難しい言葉ですが、分解してみると分かりやすくなります。
| 言葉 | 意味・解説 |
|---|---|
| 上室(じょうしつ) | 心室より上の部分(心房や房室結節など)を指します。 |
| 期外(きがい) | 本来のタイミングよりも「早く、予定外に」という意味です。 |
| 収縮(しゅうしゅく) | 心臓が電気の合図を受け取って、ギュッと縮む(拍動する)ことです。 |
つまり上室期外収縮とは、心臓の上の方から、本来より早いタイミングで余計な電気の合図が出て、心臓が予定より早くドクンと動いてしまう状態です。
普段の心臓では、「洞結節(どうけっせつ)」という場所が指揮者のように規則正しいリズムを作っています。ところが上室期外収縮では、指揮者よりも早く、別の場所から「あわてんぼうさん」が余計な合図を出してしまいます。その結果、予定より早いタイミングで1拍だけ心臓が動いてしまうのです。

この「あわてんぼうさんの合図」が1拍だけ出る、または2拍続く場合は「上室期外収縮」として扱いますが、3拍以上ダダダッと続く場合は「上室頻拍」として評価が少し変わります。
上室頻拍について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
→ 上室頻拍
【「脈が飛ぶ」「胸がドキッとする」などの症状について】
上室期外収縮では、本人が何も感じない(無症状の)ことも非常に多いです。一方で、以下のように感じるお子さんもいます。
- 脈が飛ぶ感じ(一瞬ドクンと抜ける感じ)
- 胸がドキッとする感じ
- 胸の違和感
- のどの奥がモヤッとする感じ
- 一瞬だけ息がつまるような感じ
これは、予定より早く心臓が動いた後、次の規則正しいリズムに戻るまでに「少しだけ間があく」ため、脈が飛んだように感じるのです。
症状が一瞬で終わり、運動中の失神や強い動悸(バクバク)を伴わず、検査で他に異常がなければ過度に心配しすぎる必要はありません。ただし、動悸が長く続く、突然始まり突然止まる発作がある、胸痛や失神を伴う場合は、別の不整脈を考えてしっかり評価します。
胸の痛みを伴う場合はこちらもご覧ください。
→ 子どもの胸の痛み
【上室期外収縮の心電図】
通常、心房の動きを表す「P波」という波形は、指揮者(洞結節)のリズムに合わせて一定のタイミングで出現します。しかし上室期外収縮では、あわてんぼうさんの影響で、通常よりも早いタイミングでP波が出現します。

保護者の方が細かい波形を覚える必要はありません。医療者はこの心電図を見て、「本当に上室期外収縮か」「頻度はどれくらいか」「連発していないか」「他に隠れた異常はないか」を丁寧に確認しています。
脈が抜ける「ブロックを伴う上室期外収縮」
あわてんぼうさんの合図が早すぎると、心臓(心室)が次の動きの準備を終える前に合図が届いてしまうことがあります。すると、電気の合図は出たのに心臓がうまく動けず、1回だけ収縮をお休みしてしまうことがあります。
これを「ブロックを伴う上室期外収縮」と言い、心電図ではP波の後に続くはずの大きな波(QRS波)がお休みしているように見えます。

この状態になると、はっきりと「脈が抜けた」ように感じられることがあります。
【期外収縮と頻拍の違い】
「期外収縮」や「頻拍」という言葉は似ていて分かりにくいですが、医療機関では以下のように分けて考えています。
| 名前 | どこから余計な電気が出る? | 特徴 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 上室期外収縮 | 心房など(心室より上) | 予定より早く1拍だけ出ることが多い | 回数が少なく無症状なら心配いらないことが多い |
| 心室期外収縮 | 心室(心臓の下側) | 心室から予定より早く電気が出る | 頻度、形、運動で増えるかなどを確認する |
| 上室頻拍 | 心室より上の回路や場所 | 速い脈がダダダッと連続して続く | 動悸発作として治療が必要になることがある |
上室期外収縮が1〜2拍で終わる場合は「期外収縮」ですが、3連発以上になると「上室頻拍」の疑いとして評価します。
【学校心臓検診で指摘されたら】
検診の紙に「上室期外収縮」と書かれていると驚かれると思いますが、指摘されたからといって、すぐに危険な状態というわけではありません。学校心臓検診は、症状がないお子さんの中から「念のため詳しい確認が必要な心電図」を見つけるための大切な検査です。
受診時には、主に以下の点を確認して安心できるかを見極めます。
- 本当に上室期外収縮の波形か
- 1日のうちに出現する回数は多いか、少ないか
- 2連発や3連発以上がないか
- 波の形が複数ないか(多形性)
- 運動によって増えるか、減るか
- 強い動悸、胸痛、失神などの症状はないか
- 心臓の形や動きそのものに異常はないか
- 他の不整脈が隠れていないか
条件をクリアしていれば、過度に心配しすぎる必要はありません。
【病院ではどんな検査をするの?】
お子さんの状態に合わせて、必要な検査を選んで行います(全員がすべて行うわけではありません)。
| 検査 | 分かること | 行う目的 |
|---|---|---|
| 12誘導心電図 | 上室期外収縮の波形、他の異常の有無 | 診断の確定 |
| 心エコー | 心臓の形や働き(ポンプ機能) | もともとの心臓病が隠れていないか確認 |
| ホルター心電図 | 24時間の不整脈の頻度 | 1日の出現回数、連発、他の不整脈の確認 |
| 運動負荷心電図 | 運動で不整脈が増えるか減るか | 運動制限の有無や、今後の経過観察の判断 |
12誘導心電図
基本となる心電図です。上室期外収縮のほかにも、WPW症候群、QT延長、脚ブロックなど、他の心電図異常がないかを同時に確認します。
心電図異常全般についてはこちらもご覧ください。
→ 心電図異常
心エコー
超音波で心臓の形や動きを確認します。上室期外収縮があっても、心臓そのものに異常がなければ心配いらないことが多いです。
ホルター心電図
自宅に持ち帰って記録する「24時間心電図」です。日常生活の中で、あわてんぼうさんがどれくらい顔を出しているか、連発していないかを確認します。自覚症状がある場合はメモを残していただくと、心電図と照らし合わせて確認しやすくなります。
運動負荷心電図
運動によって不整脈がどう変化するかを確認します。運動で期外収縮が「減る・消える」場合は、比較的心配が少ないサインです。逆に増える場合はより慎重に評価します。
【お薬や運動制限は必要なの?】
上室期外収縮だけで、心臓の働きに問題がなく症状もない場合は、治療や運動制限は不要なことがほとんどです。
| 状態 | 治療 | 運動制限・通院の目安 |
|---|---|---|
| 出現回数が少ない | 通常は不要 | 管理不要(制限なし)となることがあります |
| 回数は多いが、運動で増えない | 通常は不要(経過観察) | E可(制限なし)、1年に1回の確認が目安 |
| 2連発、形が複数、運動で増える | 詳しい評価を検討 | E可(制限なし)、半年〜1年に1回の確認が目安 |
| 強い症状がある、別の不整脈を引き起こす | 薬物治療などを検討 | より専門的な評価が必要になることがあります |
※学校心臓検診ガイドラインに基づく目安です。「E可」は特別な運動制限を必要としない状態を指します。
E可について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
→ 運動制限(学校生活管理指導表)
治療について
上室期外収縮は、原則としてお薬を使わず様子を見ることが多いです。ただし、頻度が高く症状がつらい場合や、他の不整脈の引き金になる場合には、お薬の治療を検討します。また、カテーテル治療は上室期外収縮だけを理由に行うことは少なく、心臓の機能に影響が出ているなど特別な場合に限られます。
【受診の目安】
以下のような場合は、医療機関でご相談ください。
- 学校心臓検診で上室期外収縮を指摘された
- 脈が飛ぶ感じをくり返す
- 胸がドキッとする症状が多い
- 強い動悸(バクバク)がある
- 動悸が突然始まり、突然ピタッと止まる
- 胸の痛みを伴う
- 息苦しさを伴う
- 気を失った(失神した)ことがある
- 運動中に症状が出る
- ご家族に若年での突然死や重い不整脈を指摘された方がいる
【よくある質問】
上室期外収縮は病気ですか?
不整脈という病気の一種ですが、多くは心配いりません。回数が少なく、心臓の働きに異常がなければ治療は不要です。頻繁に出る場合や症状が強い場合は詳しく確認します。
子どもが「脈が飛ぶ」と言います。上室期外収縮ですか?
可能性はありますが、他の不整脈の場合もあります。脈が飛ぶ感覚は期外収縮に特有の症状ですが、くり返す場合や他の症状(動悸、胸痛、失神)を伴う場合は、心電図検査でしっかり見極める必要があります。
運動制限は必要ですか?
通常、運動制限は必要ありません。検査で他に異常がなく症状もなければ、体育も部活も普通に参加して大丈夫です。運動で不整脈が増える場合などは、検査結果に応じて判断します。
自然に治りますか?
はい、成長とともに自然に減る(目立たなくなる)ことがあります。一方で、長期間残ったり、別の不整脈に移行したりすることもあるため、必要に応じて定期的に心電図で確認していきます。
上室期外収縮と上室頻拍はどう違うのですか?
連続する回数が違います。予定より早い脈が1〜2拍で終わるのが上室期外収縮、3連発以上ダダダッと続く場合は「上室頻拍」として評価し、治療が必要になることがあります。
将来、危険な不整脈になりませんか?
多くの場合、将来危険な状態に進行することはありません。回数が少なく異常がなければ安心です。ただし頻繁に出る場合などは、念のため経過観察を続けます。
検診で一度「心配ない」と言われました。来年また指摘されたら受診しなくていいですか?
いいえ、再度指摘された場合は改めて受診してください。子どもの成長や体調、運動量によって心臓の電気の出方が変わることがあります。「前が大丈夫だったから今回も」と自己判断せず、確認をおすすめします。
【当院で相談できること】

「不整脈」という名前だけでビックリしてしまいましたが、あわてんぼうさんがいるだけで怖がる必要はないと分かり安心しました。
でも、回数が多い時や症状がある時は、きちんと確認した方がよいんですね。

その通りです。上室期外収縮だけで他に異常がなければ、心配いらないことがほとんどです。
一方で、症状が強い場合や、運動で増える場合には、お子さんが安心して生活できるように詳しく確認します。
当院では、診察、12誘導心電図、心エコー、必要に応じてホルター心電図などを用いて、お子さんの不整脈を専門的に評価します。
学校心臓検診で上室期外収縮を指摘された方、お子さんが脈が飛ぶ感じや胸の違感を訴える方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人:
天童ハート小児科 院長 高橋辰徳
小児科医/小児循環器診療
この記事は、保護者の方向けに、学校心臓検診や小児循環器外来でよくあるご相談をもとに作成しています。
最終更新日:2026年7月13日
参考:






